悪人


 先日の日本アカデミー賞では、主要俳優・女優4部門をコンプリート。
 ただし、作品賞と監督賞は『告白』に。

 これだと、役者は『悪人』の方がよいけど、映画としては『告白』の方がいいって結果に見える。
『告白』は映画館で観た。

 ほんで、『悪人』はどんなものかと思って観たら、いやはや、めちゃめちゃいい映画じゃん。

 観た人のほとんどが思うであろうことが、殺人犯だから悪人と、単純に決めつけてよいものか。
 被害者とは、一方的に被害を受けた存在なのか。

 この映画は決して、殺人を肯定しているわけではない。
 ただ、そこに至る背景や、それに関わる人たちの描写から、感じるものはあるはず。

 職業貴賎、地方の閉塞感、現代の希薄な人間関係、人付き合いが下手な人たち、殺人事件における一方的な決めつけ、マスコミの対応の問題、悪徳商法、複雑な家庭環境……。
 そういった社会問題を鋭く反映している。
 リアリティーがあり、描写としては生々しい。

 正直、映画としては『告白』の方が面白かった。
 エンターテイメント性に優れ、社会問題も引喩した、見事な映画だった。

 一方、社会性という観点から見たら、『悪人』の方が上だ。
 考えさせられることは多い。
 まぁ、これだと興行収入がそれほど伸びなかったのは分かるが、映画としてのできは非常によい。

 あと、役者陣は今までの賞レースの結果が示す通り、本当に素晴らしい。
『ノルウェイの森』を観たときに、松山ケンイチ君はあの世代では抜けているといったが、妻夫木聡君を加えて、自分の中では2トップになりやした。
 深津絵里さんは海外からもあれだけの評価を受け、この演技のすごさを分かってもらえたことが嬉しい。
 柄本明さん、樹木希林さんも素晴らしいアクセントを出しており、お見事。

 映画を通じて変わっていった人が多いが、最後まで変わらなかったのは、岡田将生君演じる増尾だけというのが、なんだか切ない。
 外見とステータスだけがよく、人間性は最低なあんな男だが、そんな人に引っかかってしまう女性は割と多い気がする。
 岡田君は『告白』にも出演しており、それ以前から個人的に注目していたし、今後も期待したい役者の一人だ。