天国までの百マイル / 浅田次郎




 映画化もされたが、そちらは観ていない。
 自分の中ではトップクラスに好きな小説だ。

 初めて読んだ浅田次郎の小説で、その後に必ず読むと決めた。
 オレの親父は、オレとは比べ物にならないほど読書量が多くて、浅田次郎をとても褒めていた。

 ストーリー。
 バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男、城所安男。
 心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン・マルコ病院を目指し、奇跡を信じて百マイルを行く。

 駄目男として描かれている主人公だが、好感が持てる。
 自分とは違い、エリートの兄弟の誰もがさじを投げた母を救うと誓う城所。
 それができたら、自分も変われるんじゃないかという思いを胸に。

 城所の姿に、忘れてはいけない人間の大切なものを感じ、読み終わったときは目に涙が浮かんだ。
 読んでいる最中にも泣きそうになった。

 ドロップアウトしてしまった中年の男というのは、社会ではとても弱い存在だ。
 しかし、この小説では、それが終わりじゃないことを教えてくれた。
 世間から投げ出された城所も、見知らぬ人の助けを得ながら、母親の命を運ぶ。
 現代の中年への応援歌にも思えた。

 温かい話だ。
 性別や世代を越え、多くの人に通じる内容だと思う。
 文句なしでお勧めする。