クロスファイア / 宮部みゆき




 宮部さん好きの自分には珍しく、主人公が善良なフリをして凶悪だと感じて共感できず、2度ほど途中で読むのをやめたことがあった。
 こうして久しぶりに読んでみたら、主人公も自分が善良だとは思っておらず、異能の力と闘っていた。

 善とは何か、悪とは何か、罪と罰とは、といったことを問いかけてくる。
 最後は悲しかった。
 まぁ、話の流れ上、ハッピーエンドはないと思っていたけど。

 前半はゆっくりした感があるが、ガーディアンや木戸浩一が出てきてからより面白くなってくる。
 ラストは目が離せなくなった。

 テーマになっているパイロキネシス(念力放火能力)が万能な能力ではなく、訓練によってコントロールを身につけたり、定期的に放射してガス抜きをしないといけないなどという描かれ方をしていて、ご都合主義ではなく、フィクションながらもリアリティーがあってよかった。

 映画とはだいぶ違った。

 あれだと、小説を読んでから映画を観た人は落差を感じそうだし、映画だけ観た人は小説を誤解しそう。
 自分的には小説の方が断然いい。



【印象に残った言葉】

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 過ちを正し、不正なものを焼き払い、すべてを灰に還して静謐な無を招来する絶対の力――それが「火」だ。

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(略)
「父の葬式のあとで、話をしました。僕はこれでもう二度と義母に会うこともないだろうと覚悟していたから、別れる前に、母さんが心にしまっていることを、なんでも話してくださいと持ちかけたんです」
 ちか子は穏やかに問いかけた。「お母様はなんておっしゃいました?」
 おそらくは、思い出す必要などないほどくっきり心に刻まれている言葉であるだろうに、牧原は少し考える素振りをした。そうやって自分に折り合いをつけているのかもしれなかった。
「おまえが警官になったのは、昔、自分のしたことを償うためなのかと訊きました」
 ちか子は黙っていた。
「僕は、違うと答えました。母さんが、僕がしたと思っていることを、僕はしてないから、とね。それ以上は、義母はもう何も訊かなかった」
(略)

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