重力ピエロ / 伊坂幸太郎


 伊坂さんは、『アヒルと鴨のコインロッカー』に続いて2冊目。
 映画はまだ観ていないけど、この内容なら、映画から入っても大丈夫だと思う。
『アヒルと鴨のコインロッカー』なら、小説からの方が確実に楽しめるでしょう。

 兄は泉水、弟は春。
 二人とも、英語にすると『スプリング』となる名前を持つ。
 優しい父、美しい母。

 伊坂さんは、時系列の使い方が非常にうまい。
『アヒルと鴨のコインロッカー』では、二つの時間軸を並行して進めることにより、巧みなストーリーを生み出した。
 本作では、ところどころで過去のエピソードを盛り込み、物語のアクセントとなっている。
 小学5年生の春の絵が県のコンクールで大賞に選ばれたときの話とか。
 幼い頃のオリエンテーリングにて、春の「僕とお兄ちゃんは最強なんだ」っていう台詞とか。
 読んでいてニヤリとさせられるぐらいにうまい。

 重いことも描かれているが、読んでいて暗くならない。
 作中の言葉を借りるなら、「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」というところだろうか。

 頻繁に出てくるガンジーの逸話、グラフィティアート、遺伝子の仕組み。
 これらの引用や比喩は、センスの塊さね。

 家族の絆と愛を描いた、切なくも温かい小説だった。