博士の愛した数式 / 小川洋子




 映画を観ていたので、内容はすでに知っていた。
 なるほど、原作をほとんど忠実に表現した映画だ。
 どちらもいい。

 新しい記憶は80分しか持たない博士と、家政婦の「私」、私の息子のルートの交流を描いている。

 どんなに輝かしい時間を共に過ごしても、博士の中に残ることはない。
 それが読み手に悲しさと切なさを与える。

 しかし、悲しい話ではない。
 3人の過ごす日々は微笑ましく、温かみに溢れている。

 数学に対する見方が面白い。

 28は全ての約数の合計が28になる「完全数」。
 それを江夏さんの背番号と関連づけるとは、なんという着眼だろう。

 284の約数の和は220。
 220の約数の和は284。
 これを友愛数と呼ぶ。

「……友愛数だ。神の計らいを受けた、絆で結ばれた数字なんだ。美しいとは思わないかい? 君の誕生日と、僕の手首に刻まれた文字が、これほど見事なチェーンでつながり合っているなんて」

 素敵な台詞だ。