マークスの山 / 高村薫
「俺は今日からマークスだ! マークス! いい名前だろう!」
――精神に<暗い山>を抱える殺人者マークス。
南アルプスで播かれた犯罪の種子は16年後発芽し、東京で連続殺人事件として開花した。
被害者達につながりはあるのか?
姿なき殺人犯を警視庁捜査第一課七係の合田雄一郎が追う。
直木賞受賞作。
本文より。
>合田雄一郎は音一つなく立ち上がった。
>三十三歳六ヶ月。
>いったん仕事に入ると、警察官職務執行法が服を着て歩いているような規律と忍耐の塊になる。
>長期研修で所轄署と本庁を行ったり来たりしながら捜査畑十年。
>捜査一課二百三十名の中でもっとも口数と雑音が少なく、もっとも硬い目線を持った日陰の石の一つだった。
壮絶だった。
自分が今までに読んだミステリーの中では最高傑作に思える。
最初から最後まで、圧倒的なスケールで描かれていた。
解説には、「これはミステリーではない、本格小説だ」なんてあった。
何がミステリー、何が本格小説かなんてオレには分からないが、確かに『マークスの山』はただのミステリーとは違う気がした。
なんというか、もっとスケールの大きいものに感じた。
横山秀夫が『半落ち』で直木賞を取れなかったことより、同氏が直木賞との決別を宣言したのは、知る人ぞ知るところだ。
素人がおこがましいが、オレから言わせてもらえば、『半落ち』が直木賞を取れなくても、別に変ではないと思う。
他にも直木賞作品を読んだことがあるが、どれも秀逸だ。
この『マークスの山』も凄い作品で、これと『半落ち』が同評価で並べられるのは納得がいかない。
これで直木賞が取れていなかったら、選考員はあまりに目がないなと思う。
実際は受賞したわけだから、やっぱりさすがだ。
この本の主人公の名前は合田雄一郎という。
ずっと「あいだ」だと思っていた。
だって振り仮名がないんだもん。
そしたら、友達がそれは「ごうだ」だと教えてくれた。
物語もかなりの終盤になってから主人公の名前が変わったというのは、何気に自分の中ではショックだった。
そしたら、まだ名前を間違えていた人物がいた。
林原。
「はやしばら」だと思っていたら、「りんばら」だった。
これはかなり重要なところで、合田が「ごうだ」ではなく「あいだ」で読んでいても物語には支障ないが、林原が「はやしばら」か「りんばら」かで変わると、物語が全く別物になってしまう。
その理由は読めば分かる。
ここまで言っておきながら言わないのもいやらしいが、これから読む人がいたら面白みを一つ残しておきたい。