TUGUMI / よしもとばなな
好きな小説です。
読んでよかったです。
ストーリー。
生まれつき病弱で、医者に短命であることを告げられたつぐみ。
そのために周りから甘やかされて育ち、意地悪でわがままな性格になった。
一見すると嫌な子のようで、実はとても純粋な心を持っている。
そんなつぐみとその周りを囲む、「私」の海辺での思い出。
海辺が舞台で、描写が非常に美しい。
作者自身が西伊豆に行き慣れていることがあり、描写がリアルで、情景が目に浮かびます。
また、登場人物の心がキレイです。
つぐみは確かに嫌な性格を持ち合わせていますが、読めばそれだけじゃないことが分かるはずです。
いつ死ぬとも分からない人生を送る彼女の熱い、生身の感情を感じました。
主人公の「私」であるまりあ、つぐみの姉の陽子、つぐみと出会う恭一、まりあの両親と、登場人物に好感が持てます。
『キッチン』を読んだときにも感じましたが、よしもとばななさんは、感覚的なことを言葉にする能力が凄いです。
〜好きな描写〜
・夕方、暮れてゆく湾を見通す、浜辺の高い堤防を、つぐみと男の子が歩いてゆく。夕空には鳥がひくく舞い飛び、波音がきらめきながら静かに寄せてくる。走り回る犬しかいなくなった浜は、砂漠のように広く白く横たわり、いくつものボートが風にさらされている。遠くに島影がかすみ、雲がうっすらと赤く輝いて海の彼方へ沈んでゆく。
・ひとり、山本屋へ向かって黄昏の中を歩きながら私は少し淋しかった。夏の終わりには失われるふるさとの道を行き来する確かな気だるさを心にとめておきたかった。まるで刻刻と姿を変える夕方の空のように、いろいろな種類の別れに満ちたこの世の中を、ひとつも忘れたくないと思った。