夜明け前
暗い。まだ夜中だ。
布団に入ったのは遅かったのに、なぜこんな時間に目が覚めたのだろう。
起きるのには早すぎるので、目を閉じる。
……。
……。
寝つけない。
不眠症でもないのに、今日に限ってなんなんだ。
携帯電話を取ると、午前三時になろうとしているところだ。
まだ二時間も寝てないじゃないか。
その割に、頭も冴えているし、思い切って起きてみるか。
暗い部屋でしばらくぼーっとする。
そんなうちに、なんとなく、外へ出たくなった。
俺の部屋は玄関のそばだ。
二階で寝ている両親は、静かに出て行けば起きやしないだろう。
十年もこの部屋にいたのに、この位置関係の利点に気づいたのは最近だった。
ジャージの上にウィンドブレーカーだけを羽織り、電気をつけずに玄関のドアを開けた。
外は真っ暗で、星が少ない。
月を探すが、見つからなかった。雲に隠れているのかな。
寒い中で外に出たのに、何をするかなど考えていなかった。
とりあえず、近所の公園に行ってみる。
公園に着くと、当然だが誰もいない。下手に誰かがいても怖いので、その方がよかった。
ペンキが少し剥がれた青いブランコに座り、小さく揺らしてみた。
この公園にも、もう随分来ていなかったな。前回がいつか思い出せない。
ブランコが二つ、円形の砂場、登ってから降りるまで五秒の滑り台。
引っ越してきたばかりのときは、家のすぐそばに公園があることを喜んでいた気がする。
だが、この程度の公園じゃいつまでも楽しめるはずがなかった。
もう一度月を探すと、細い三日月が雲の影から姿を現したが、またすぐに消えた。
……大学に入って、何がしたかったんだっけ。
いっぱい友達を作ろうと思った。
漠然と、高校のときより楽しくなると思っていた。
気づけば四年がたっていたような大学も、あと一週間で卒業だ。
大学生活で一体何が残せたのだろう。
もっと何かができたのかな。
何でもできたのかもしれない。
何もなかったわけじゃない。
楽しいことがあった。
大学の友達ともしばらく会えなくなる。会社に入ったら、また新たな友達ができるだろう。
人生は出会いと別れの繰り返しだけど、別れるつもりで出会ってきたわけじゃない。またあいつらと遊ぶさ。
会社で働く自分はうまく想像できないが、中学から高校、高校から大学で変わったように、また違った世界になるのは間違いない。そして、その変化の振れ幅は、今までで最大のものになるのだろう。
環境が変われば、人も変わる。俺も変わらなきゃいけないのかな。
寒くなってきた。
時計の時刻は四時を指している。
けっこういたな、いい加減にこの辺で帰っておこう。
今からだったら、三時間は睡眠時間が確保できる。
なんだか、気持ちよく寝られそうな気がした。