理科、ちゃんと勉強してる?
隊長……隊長……。応答願います。非常事態発生です。
ここ山野上小学校三年二組で一名、大変な事態が起きている。被害者は俺だ。
隊長……と、心の中の人物に呼びかける。
「どうした?」
「隊長、実は体調がよくなくて」
「くだらんことを言うな」
「冗談じゃないんです。ものすごくお腹が痛くて」
一体、何に当たったんだろう。こんな突然に。
「我慢できないのか?」
「次の休み時間まではなんとか。しかし、今にも屁をこきそうなのは深刻な状況であります」
クラスで屁をこいたら笑い者だ。いくら男子だからって、恥ずかしいもんは恥ずかしい。
「そうか。なら、これしかないな……」
隊長からとっておきの作戦を授かった。失敗は許されない。果たしてうまくいくだろうか。
そのときがきたようだ。
マジで屁をこく五秒前。約束の五秒前。
広末涼子の歌が頭に流れながら、俺は屁をこいた。
……。
臭い。
周りの奴らが反応している。
だが、よし、誰も俺だとは気づいていない。それもそのはず、すかしっ屁だからだ。
かといって、俺が疑われない保証はない。ここは任務をより確実にする必要がある。
隣の樹理亜ちゃんが顔をしかめている。その顔が言っている。「臭くない?」と。
だから、俺はこう言った。
「なんか臭くない?」
男なら直球勝負。そのまんまずばりを言った。
「ねー、臭いよね」
俺だとは疑っていないな。
「誰か屁こいたね」
大胆ながらも不敵。俺もなかなかやるな。ここは更に攻めの一手だ。
「あっちの方から匂いしない?」
ミラクルなことに窓が開いていて、空気の流れ上、本当にそっちから匂ってきた。
「あぁ、そうだねぇ」
隊長、ありがとうございます。作戦成功です。
「こら、そこ、話をするな」
学校の先生の中じゃ一、二を争うぐらい口うるさい担任教師に注意をされた。普段ならむかつくが、このときばかりは感謝した。
隊長、状況は安全圏に入りました。これでもうこの話題を口にする人はいなくなり、授業が終わればみな忘れると思われます。加えて、自分も休み時間に準備を整えることができます。
心の中で、隊長のガッツポーズが目に浮かんだ。
「そうか、よくやった」
すっかり安心した。
あぁ、そういえば今は理科だったっけか。理科よりも梨華ちゃんと勉強したい今日この頃だ。
今日の給食はカレーか。
別に嬉しくない。
それよりも、飲み物は毎日が牛乳って勘弁してよ。ご飯と牛乳って根本的に合わないんだよ。お茶だって十分に栄養あるんだし。
大人ってそーゆーとこがアホだなと思いつつ、腹の調子も治まってきて、全てがうまい方向に向かっていた。理科はちゃんと勉強していません。